
奈良県・興福寺の八部衆像・阿修羅像(国宝)は、優しい少年のような紅顔が、眉根を寄せ、愁いを含んだ阿修羅像の表情には、観る者の心を引き付け、視線をそらすことが出来なくなるような魅力を備えています。
しかし、この像が多くの人々を魅了するのは、如来像や菩薩像が、慈愛に満ちた尊像であっても、崇高な礼拝の対象として、自分たちからはるかに卓越した存在であるのに比べて、この像は、もっと人間に近い身近な感じの像みたいみ見人々の心を捕えているのではないでしょうか。
この優しい面持ちの阿修羅像は、本来の阿修羅王は、この像から想像するような優美な神ではありませんでした。
古代インド神話の阿修羅王は、帝釈天を向こうに廻して、荒々しい合戦を繰り返す悪神で、容貌醜怪な札付きの外道とされています。
興福寺の阿修羅像は、この神が釈迦の教化によって仏法の守護神となった姿で、天界を暴れ廻る鬼神のイメージはありません。
しかしこの像をよく見ると、例えば、やや眉根を寄せた悲しげにも見える表情の奥に、何か激しいものが秘められているように思えます。
この神秘な表情は、荒々しい心が仏の教化によって迷いから目ざめ、愁眉を開きつつある顔付きだといわれています。
まさにその通りで、恐ろしい顔から浄化された顔へと移り行く過渡期の表情を、見事に表現しています。
一般に仏像は、男でも女でも無いそうです。
特にこの阿修羅像は、少年か少女のような清純な優しい顔になっています。
また、子供から大人になっていく途中ともいわれています。
しかし、清純はともかく、やさしいと言うのは正確ではないようです。


阿修羅像はもと興福寺西金堂(さいこんどう)に釈迦三尊、梵天・帝釈天、四天王、十大弟子像などとともに安置されていた八部衆のうちの1体です。
この堂は光明皇后が前年の1月に亡くなった母橘三千代の一周忌に間に合うように創建したものです。
3つの顔と6本の腕をもつ少年のような可憐な像ですが、胴体も腕もとても細く、憂いのある敬虔な表情が脱活乾漆造(だっかつかんしつづくり)の技法でとてもリアルに表現されています。阿修羅はインド神話では軍の神で、激しい怒りを表すのが一般的ですが、興福寺の阿修羅像に激しさはどこにも見られません。
阿修羅像は、当時、唐からもたらされた『金光明最勝王経(こんこうみょうさいしょうおうきょう)』をもとに作られたと考えられますが、そこには、これまでの罪を懺悔して、釈迦に帰依することが説かれています。阿修羅の表情は静かに自分の心を見つめ懺悔する姿を表したものと考えられます。 (九州国立博物館 阿修羅像説明より)

阿修羅 (新人物文庫) [文庫]
梓澤 要 (著)
内容(「BOOK」データベースより)
いま日本でいちばん愛されている仏像―奈良興福寺の阿修羅像。折れそうに華奢な肢体に、憂いをふくんだ口元、遠くを見つめる眼差…その少年のような姿かたちの仏像に面影を刻まれた男がいた。藤原氏の一族に生まれながら、光明皇后、藤原仲麻呂らの専制を憎み、打倒藤原氏に起ち上がった橘奈良麻呂。みずからの出生の秘密に苦悩し、謀叛を企てた罪で非命の最期をとげた奈良麻呂の生涯を描く壮大な古代ロマン。千三百年の時空を超えて、阿修羅の物語がいま甦える。
魅惑の仏像 阿修羅―奈良・興福寺 (めだかの本) [単行本]
小川 光三 タイトル
内容(「MARC」データベースより)
阿修羅はもともと鬼神ですが、興福寺にある像は、体も手足も細く長く、美しく調和がとれていると同時に、人々に何かを静かに語りかけてくれるような優しさもみえます。その阿修羅像の魅力を詳しく解説。〈ソフトカバー〉
奈良の興福寺の宝物館で一番人気のある仏様は阿修羅像ですし、現在東京国立博物館で開催されている阿修羅展の人気は凄まじく、その影響もあって仏像ブームが到来しています。
そんな阿修羅像の魅力をあらゆる角度からアプローチして探る書籍というと、この毎日新聞社の魅惑の仏像シリーズの本書『阿修羅―奈良・興福寺』が一番良いのでは、と思います。
仏像ワンダーランド奈良 (JTBのMOOK) [ムック]
内容紹介
「日本美術の応援団」美術史家・山下裕二教授の独自の視点で、楽しく、鋭く、仏像を紹介する。仏像ブームを牽引する30代女性を中心に、大人の読者を満足させる内容を維持しながら、ビジュアルの美しさ、コメントの面白さにこだわった一冊。
★三好和義、土門拳の名作仏像写真を巻頭に収録。
★山下裕二教授の“好仏”コメント入りで、鑑賞ポイントが分かりやすい。
<主な内容>
写真家の目で見た美仏たち/山下教授の「好仏」ベスト12/仏像巡りの旅(山下先生ドッキリセレクト/いいとこ取り一日コース)/仏像教室 1 仏像鑑賞の心得10ヵ条
国宝 阿修羅 [2012年 カレンダー] [カレンダー]
内容紹介
B3 7枚
毎年ご好評いただいている「阿修羅」の2012年カレンダーです。
憂いに満ちたその表情は、永遠の謎を秘め、わたしたちを魅了し続けています。
出版社からのコメント
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※写真と現物が異なる場合があります。
※都合により、タイトル・価格・仕様が変更になる場合、発売中止になる場合があります。ご了承ください。
阿修羅像を特別公開 奈良・興福寺
国宝 阿修羅像
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